『ローマの休日』
人気の秘密

を考えよう

オードリー・ヘップバーン主演の名作『ローマの休日』をご存じですか?それは、王女アンと新聞記者との、つかの間の恋を描いたキュートで美しい物語です。互いに好意を持ちながらも、王女は王室のために恋を諦める…。日本では1954年の初公開以来、2003年まで8回にわたってリバイバル上映され、テレビ放映時の視聴率も1970年代は常にトップでした。なぜ日本でそんなにもヒットしたのか、その謎を探ってみましょう。

打田素之 教授
■研究分野:フランス文学 映像論 など
■主な担当科目:文芸の基礎 現代社会演習

Step1 気づく

毎年たくさんの映画がつくられるけど、ヒットする・しないの違いは?
『ローマの休日』はどこがすごいんだろう。


日本映画・外国映画を含め、日本で公開される映画はたくさんありますが、ヒットする作品はそれほど多くありません。映画館でリバイバル上映されたり、テレビで何度も放送されるほど人気となった作品には、なにか人を惹きつける理由があるはずです!


Step2 考える・調べる

いつ、誰が、どんな思いで見ていたのか。名作となった理由を知るためには、時代背景を知ることが大切!


初公開時の入場料は80円~100円。そんな時代に『ローマの休日』は2億8400万円という興行収入がありました。当時は第二次世界大戦終結後で、1950〜60年代の日本はまだ貧しく、豊かさに憧れ、特に女性たちは「高貴な生活」を夢見ていました。そこに流行の秘密が隠されています。実はその後、80年代・90年代に入って日本全体が豊かになってくると、上映回数は減っていくのです。


松蔭の授業では!

映画の研究であれば、当時の映画雑誌での評価や評論家の評価などを探し、資料に基づいて分析します。作品を鑑賞して「どう感じたか」だけではなく、一歩踏み込んだ視点から、作品がもつ本当の魅力を探していきましょう。

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ストーリーの良さだけではなくて、その時代の暮らしや価値観に「ハマる」ことが大切なんだ!

先輩VOICE

Step3 発展させる

「ああ、王女様でなくてよかった」ジェラートなんていつでも食べられるし、バイクにも乗れれば、恋だって自由にできる。高貴であることの不自由が、逆に女性の現実を肯定!


『ローマの休日』が人を惹きつけた大きな理由は、「高貴な生まれではない」という現実を、「庶民であることこそ、素晴らしい」と肯定したところにあります。そして、王女の職務のために「恋」を諦めるという、私達、日本人なら誰でも共感できる「自己犠牲の精神」。この二点が『ローマの休日』を不朽の名作にしました。


Step4 応用する

いま興味があることや不満に思っていることは何ですか?その感情がヒットのヒントかもしれません!現代に「ハマる」テーマを探してみましょう。

『君の名は。』のようなヒット作品やヒット商品、時代の流行は大衆心理に関係しています。大衆心理を分析することは、商品企画などいろいろな現場で役立つはずです。

先輩アドバイス

兵庫県 松蔭高等学校出身
在学生(3年)

自分の興味と、世間の関心。
その交差点に独創的な「ヒット」のヒントがあるのかも!

名作と名高い『ローマの休日』。白黒映画なのに色がついて見えるような、カラフルな表現と女優のチャーミングさは、まさに不朽!だと感じました。でも、結局ふたりは結ばれなくて…正直、これってハッピーエンドなの?と腑に落ちないところもありました。でも今回学んだように、それは現代だからこその感覚なのかもしれません。これからあらゆる作品と向き合っていくときには、時代性を意識するようにしないといけませんね。

私が興味をもっているのは、ギリシャ神話についてです。ファンタジーや歴史物など、実は神話がルーツになっている作品は意外と多いんです。だから隠されたルーツを知ることで、作品をより楽しめたらいいなと思っています。また、最近注目されているキーワードとしては「ジェンダー」が思い浮かびます。ギリシャ神話とジェンダーをリンクさせたら、面白い作品が生まれるかも…?いろいろと考えながら、「ヒット」について研究していきたいです。

先生のまとめ

日本人は悲恋が好き?
それぞれの時代にヒットしたものを分析すると、これまでとは違った考え方で作品を分析できます。

『ローマの休日』ヒットの理由は、貧しかった大衆の生活をとらえ、当時の女性の心を肯定したことにあると説明しました。ですが、さらにもう一つ。ヒットの裏側には日本人独特の心理も働いていたのです。それは…「悲劇が好きだ」ということ!なんらかの障害があって相思相愛なのに結ばれない…あるいは大義のために自分の思いを抑えて集団に尽くす…。古くは近松門左衛門の「心中もの」に、後者は高倉健の東映作品に多く見られます。昔から日本人はこうしたパターンの物語が大好きな国民です。日本で『ローマの休日』が大ヒットを記録し、現在まで根強い人気を保っているのは、この作品が日本人の心の琴線に触れるものを持っていたからに他ならないと私は考えています。

「悲恋もの」において、1960年代半ばまでは、貧富や身分の差が恋の障害となっていました。しかし、60年代後半には社会の変化によって、その差が障害ではなくなってしまいます。そこで登場したのが≪難病映画≫なのですが、医学の発達した現在では、病気ももはや恋人たちの障害とはなりえません。最後に残された砦として「時間」が登場します。つまり、日本人の「悲劇好き」はSFに昇華したと言えるのです。
最近ヒットした映画でも、時間の壁が出てきませんでしたか?古臭いなどといわずに、名作や古典を知ってから新しい作品を学ぶと、きっとまた、違った分析ができるでしょう。そういう意味で、ギリシャ神話を知ることはとても大切だと思います。

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