この書はどうしてスゴイの?~書とはどんな芸術なのか~ を考えよう

皆さんは、書について、どのようなイメージを持っていますか?型にはまっていて面白味がない?決してそんなことはありません。書とは、自分の内にあるものを表現する芸術のひとつ。つねに何かが生まれる可能性を秘めています。とくに、神戸を中心とする兵庫県は戦後、書の活動が活発で、その時代にふさわしい書のあり方を模索・発信してきた地域なのです。

丸山果織 専任講師
■研究分野:書の美学(戦後の書・仮名書・前衛書) など
■主な担当科目:書道講義 日本書道史 書道実技(仮名)

Step1 気づく

これは書?絵画?そもそも書って、どんな芸術なんだろう?


【図1】は書作品で【図2】は抽象画だと思いましたか?これらはどちらも書作品。【図1】は安東聖空(1893~1983年)の大字仮名と呼ばれる書、【図2】は森田子龍(1912~1998年)の前衛的な書です。彼らはどうしてこのような書を書くようになったのでしょうか。ただ文字を美しく書くだけが書ではありません。「書とは、どういう芸術か?」を一度考えてみるのも面白いですよ。


Step2 考える・調べる

戦後、それまでの伝統的な書を越えていこうとしてきた!どうしてこんな書が生まれたんだろう?


森田子龍の作品は、伝統的な漢字書を大切にしつつも芸術としての書を追求したもの。安東聖空は、伝統的な仮名書を大切にしつつ、時代に即した「大字仮名」を考案しました。これもある意味では前衛的といえます。実は、安東聖空も森田子龍も兵庫県出身の書家。当時、神戸では書の勉強会が盛んでした。そこで仮名書・漢字書というジャンルを超えた交流があったのかもしれません。


松蔭の授業では!

社交的で、さまざまな文化が集まる街・神戸だからこそ、「伝統と革新」両方を学び、発展させる授業が豊富です。神戸の書が西洋画の影響を受けて発展したように、伝統文化に新しい魅力を見出し、育むチカラを養います。

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書というと京都や奈良のイメージだけど、神戸など兵庫県でも盛んだとは知らなかった!

先輩VOICE

Step3 発展させる

ただ書くだけでは可能性が広がらない!?視野を広くもつ必要があるんだ。


【図1】や【図2】の作品が生まれた背景には、書作品が美術館などで展示される機会が増えたことがあります。大きな壁面や絵画と並べて展示された際、書の造形性について考えられるようになりました。そこで、今の書に安住するのではなく、さまざまな知識をもとにその時代にふさわしい書を模索していったのです。たとえば森田子龍は西洋美術の考え方を学びながら、自分の書を追求しました。


Step4 応用する

伝統を大切にしながらも、時代に即したものを生み出していく。 それが神戸気質なのかもしれません。伝統と革新が共生する神戸の街で書や日本文化を学んでみませんか?

今やっていることや見えていることが本当に正しいかどうか?一度疑問をもってみてほしいと思います。

先輩アドバイス

大阪府立箕面高等学校出身
在学生(3年)

絵画などと同じように、書でも想いを表現できる。「書=地味」じゃないと知ってほしい!

私は子どものころから書道をしていて、神戸松蔭に入学を決めたのも、書の授業が充実していて魅力的だったからです。高校生まではお手本通りの書をしていたのですが、入学後はほかの芸術分野や文化の要素も取り入れた作品に取り組んでいます!たとえば墨一色というイメージの書と色彩を組み合わせたり、絵と組み合わせてうちわや扇子を使ってみたり。ただ文字を書くだけでなく、「何を伝えたいか」幅広い視野から見て、考えることが大切だと思うようになりました。
オープンキャンパスの書体験で高校生の皆さんにアドバイスするときも、「キレイに書くだけが書じゃないよ」と伝えています。書は地味というイメージがあるかもしれませんが、決して地味じゃありません!私はいま、お洒落で格好いい、自分だけの書表現を模索しています。

先生のまとめ

ほかの芸術や国について学び、視野を広げながら、書や日本文化を深めてください。

今回取り上げた安東聖空と森田子龍について、少し詳しくお話ししましょう。 安東聖空の【図1】のような仮名作品を「大字仮名」と呼びます。従来の仮名書は小さな文字で書いて机上で鑑賞されるのが通例でした。それを、大きな壁面でも鑑賞に耐えられるようにと「大字仮名運動」を進めたのが安東聖空とその弟子たちでした。彼らの影響もあり、今でも神戸では仮名書が盛んです。一方、【図2】のような作品は、文字を書く意味…書とは何か?を追求し、西洋美術との対比や禅の思想を学ぶ中から生まれたものです。 彼らは2人とも「文字を書くだけの人」ではありませんでした。書に軸足を置きながらも、今自分が行っていることを問い直し、幅広い知識と新たな視点を得て、日本が誇れる独自の文化を開発していたのです。
みなさんもぜひ、書でも日本文化でもそれだけを勉強するのではなく、他の芸術や他の国についても注目してみてください。人と文化、モノとコトの交流が盛んな神戸の街と神戸松蔭は、視野を広げ、興味を深掘りするのに適した場所だと思います!

本学図書館には貴重な書の資料も所蔵されており、直接見て学ぶことができます。

【右画像】
「本願寺本三十六人家集」(国宝)の木版色刷複製
(神戸松蔭女子学院大学所蔵)

※本学は神戸市立博物館と連携協定を結んでいます。

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